「あの、ミシオさん……。その”聖王の試練”は誰でも受けられるのですか?」
聖王の試練を受けてみようという気持ちが芽生えたシオリは、ミシオに聖王の試練が何人にも受けられるものか訊ねた。
「はい。ゲートを閉じる力を持つ者は、何も”運命の子”に限った訳ではありません。聖王が残した試練を乗り越えた者は、分け隔てなくゲートを閉じる力を持った者と認められます」
「そうですか。試練をクリアしたからといってその人が”運命の子”と断定される訳ではないのですね」
「ええ」
その話を聞いてシオリは少しホッとした。ユリアンの言葉から試練を潜り抜けた者が”運命の子”と決めつけられるのかと思えば、別にそういう訳ではない。なら純粋な力試しで試練を受けるのも悪くはないとシオリ思った。
「ひょっとしてシオリ、君も聖王の試練を受けようと…」
「うん。自分が”運命の子”だとは思わないけど、今の自分がどれくらいの力を持っているか試してみようと思うの」
「なかなかいい心掛けだ。では俺も付き合うとするか」
「ユキトさんも!」
「ああ。新しい剣の切れ味も試して見たい所だしな。誰でも受けれるものなら別に問題ないだろう」
「それはそうですけど……」
自分と親しい人が次々と試練を受けると決意したのは、ユリアンにとっては複雑な思いにかられることだった。二人が聖王の試練を受けようと思い立ったのは自分の影響と見て間違いない。それではまるで自分が二人を誘い込んでしまったかのようで、何だか申し訳ないと思った。
「分かりました。では三人共私に付いて来て下さい」
三人はミシオに案内され、聖王廟へと向かって行った。
「わぁ〜。これが聖王廟なんですね〜」
長い長い階段を登った先に、ようやく聖王廟が見えて来た。遠目でも充分壮大な建築物に見えたが、間近で見ることにより改めてその壮大さにシオリは心惹かれたのだった。
入り口にドアはなく、三人はミシオに案内されるがままに聖王廟の中へと入って行った。
入り口から歩いて直の所には短いながらも階段があり、その先には芸術品と言って差し支えない程のモザイク画のステンドグラスに囲まれた大広間があった。
「凄いです。これだと廟というよりは教会ですね」
「では今から試練の説明をさせて頂きます。この聖王廟には全部で三つ試練を受けられる間があります。
まずはこの広間から右に進んだ所にある”王者の試練”の間。この試練は人の意志力を試す試練で、近道と回り道に分かれています。どちらの道も最終的には同じ場所に辿り着き、近道は強大なモンスターが待ち構えており、回り道はそれ程強くないモンスターが多数待ち構えています。この試練を乗り越えた者には”聖王の兜”が与えられます。
次は広間から左に進んだ所にある”狩人の試練”の間。この試練は弓の技量を試す試練で、計三つの弓を射る試練を受けることとなります。この試練を乗り越えた者には”妖精の弓”が与えられます。
そして中央の地下室の先にある”つらい試練”の間。この試練は名の通りつらい試練で、どういう試練かは受けてみて体感して下さい。この試練を乗り越えた者には”聖王ブーツ”が与えられます。
どの試練から受けるのも自由ですが、最初に受けるのならば王者の試練か狩人の試練が良いかと思います」
「う〜ん。じゃあ僕は弓が使えないし、王者の試練を受けてみようかな?」
「そうか。なら俺も王者の試練に付き合おうとしよう」
そうしてユリアンとユキトは王者の試練の間へと向かって行った。
「シオリさん。貴方はどうします?」
「そうですね……。狩人の試練を受けようと思います。私、一応弓使えますし」
「そうですか。では頑張って下さいね」
「はい!」
こうしてシオリはユリアン達と別れ、狩人の試練に臨むのであった。
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SaGa−22「聖王の試練」
「ここは狩人の試練です。どうぞ奥へお進み下さい」
「は、はい!」
聖王廟の中を左に左に進んで行くと、射撃場のような場所が見えて来た。入り口の側にいる係員らしき人に話し掛けると奥へ進むよう言われ、シオリは言われるがままに奥へと進んでいった。
「ようこそ狩人の試練へ。当主様から簡単なご説明はお受けになっているでしょうが、ここで改めてご説明させて頂きます。
この狩人の試練は弓の技量を試す試練で、異なる試練を計三回お受けになってもらいます。
まず最初は技無しで三回以内に的に当てられるかの試練。これは純粋な弓の技量を測る事を目的としています。
次に技を使って二回以内に的に当てられるかの試練。この試練は技の技量を測る事を目的としています。
そして最後に実際に妖精の弓を使い一回で的に当てられるかの試練。これは試練を受ける者に妖精の弓を使いこなせるか否かを測る事を目的としています」
「つまり最初の二回は妖精の弓を使いこなす為に必要な技量を持ち得ているか試す試験で、最後の一回に本当に所有者の資格があるかどうか試す試験ということですね?」
「はい。以上で説明を終わりますが、準備は宜しいでしょうか?」
「はい!」
係員の説明が終わると、シオリは的の真正面に立ち、弓を構えた。
(距離はおよそ100m……果たして私に当てられるかしら……。
ううん、悩んでいる暇はない。心を落ち着かせて、意識を集中させて……)
多少弓は使えるとはいえ、こういった的に当てるという行為をシオリは行なったことがなかった。初めての体験ということもあリ、緊張感は拭い去れなかったが、それでも出来るだけ集中して試練に望もうとした。
「えいっ!」
シュッ!
タイミングを見計らい、シオリは最初の一撃を放った!
ヒュー、ストン
しかしその一撃は僅かに的に届かず床に落ちてしまった。
「う〜ん。今の私の技量だと辛うじて届くか届かないかね……。今は的に真っ直ぐ向けて射たら床に落ちたから、今度は少し上向きに……」
一射目は外したものの、シオリは焦ることなく失敗を分析し、次に備えた。
「ええいっ!」
シュッ
最初の失敗を踏まえ、今度は少し上向きに射た。
トスッ!
「やった! 当たりました!」
的の中心を射抜けた訳ではないが的に当たったことには変わりなく、シオリは思わず喜び叫んだ。
「おめでとうございます。では次に技を使い的に当てられるかの試練に移ります」
「あの、使う技は何でもいいんですよね?」
「はい。影縫いのような初歩的な技でも、連射のような高度な技、でたらめ矢のように複数の対象物を射ることを目的とした技でも、弓技であれば何でも構いません」
「分かりました。では……」
正直自分は高度な技は使えない。けど初歩的な技でも良いなら……。シオリはそう心に念じ弓を構える両手に神経を集中させた。
「行きます! イド・ブレイク!!」
今自分に扱える精一杯の技をシオリは渾身の思いで射た!
トスッ!
「やりました! 今度は一発目で当たりました!!」
先程とは違い一射目で的を射抜けたことにシオリは心の底から喜び叫んだ。
「おめでとうございます。では最後の試練に移ります。今から妖精の弓を運んで来るので暫しお待ち下さい」
「……」
弓が運ばれて来るまでの間、シオリは胸の高まりを抑えながら弓が運び出されるのを待ち続けた。ついに最後の試練まで来た。正直自分の弓の技量は大したことない、殆ど偶然でここまで来られたようなものだ。でも偶然とはいえ最終試練まで辿り着けたのだ。自分に要請の弓を使いこなせるかどうかは分からないけど精一杯頑張ろう。シオリはそう自分の心に言い聞かせたのだった。
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「お待たせしました。これが妖精の弓です」
目の前に運び出された弓。300年以上前から伝わる聖王遺物の一つである妖精の弓。それだけ昔から伝わる弓だというのに古い物だという印象は与えられず、またその弓として精錬されたデザインは惹かれるものがあった。
「あの…触っていんですよね」
「はい。そうしなければ試練になりませんので」
「それもそうですね…」
妖精の弓のあまりの神秘さに思わず見当違いな質問をしてしまったと、シオリは恥ずかしさのあまり顔を赤らめてしまった。
「では、改めて」
すうっと一呼吸し、シオリは妖精の弓に手をかけた。
「えっ、何この不思議な感じ……?」
妖精の弓に触った瞬間、シオリは不思議な感覚に包まれた。それはまるで弓が自分の身体と一体になったような感覚であった。
「妖精の弓は対象者の魔力に呼応し、その力に応じて威力が変化します。弓を触って何か感じたということは、それは貴方の魔力が弓に引き込まれた証拠です。
では改めて最後の試練に入りますが、宜しいですね?」
「はい。ところで矢はどうすればいいんですか?」
「先程まで使っていたシオリさんご本人所有の矢をお使い下さい」
「分かりました」
自分の矢筒から矢を取り出し、シオリは妖精の弓を構えた。妖精の弓は所持者の魔力に呼応し威力が変化する。つまり術を唱える気持ちで弓を引けばいいのだ。弓の扱い方を説明された訳ではないが、シオリはそう解釈し、妖精の弓に魔力を込めた。
「えい!」
トシュ! ピキピキ……パカン!!
術を唱える気持ちで放たれた矢は、目にも止まらぬ早さで的に向かって一直線に飛んで行った。そして見事的に命中したと思ったら、次の瞬間的は真っ二つに割れてしまった。
「……」
その光景にシオリは言葉を失った。同じ矢で射たのに弓が違うだけでこんなにも威力が違うだなんて…。普通どのような弓でも的が割れるなどということはまずない。熟練者なら出来ないこともないだろうが、自分は初心者に毛が生えたような技量しか持ち合わせていない。そんな自分にも的が割れるのだ。伝説の時代から伝わる弓だけのことはある。そうシオリは妖精の弓の威力に畏怖したのだった。
「おめでとうございます。すべての試練を乗り越えた貴方は、妖精の弓の所有者として認められます。そして所有者として認められた者にはもう一つ与えられる物があります」
その言葉と共にシオリの前には二本の矢が差し出された。
「この矢は……」
「”妖精の矢”です。妖精の弓と同じ材料で作られた特殊な矢です。この矢は妖精の弓で射られると使用者の魔力の高さにより自在に軌道を変えることが出来ます。残念ながら現存する妖精の矢はこの二本のみですが、使用者の魔力が高ければ対象物に刺さった後手元に戻って来ます。シオリさん程の魔力をお持ちの者なら、手元に戻すことも容易でしょう」
「……。分かりました。私にどこまで使いこなせるか分かりませんが、大切にお預かりします」
この弓と矢を受け取れば自分もユリアンと同じ使命を負う事になるかもしれない。けど、この弓矢と共に自分の力が世の中の何かしらの役に立てるならば、素直にこの弓矢を受け取ろう。自分勝手な言い訳かもしれないけど、そうすることが野盗の人達を殺めた自分の罪滅ぼしになるかもしれない……。
そう心に誓い、シオリは妖精の弓と矢を受け取ったのだった。
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ルウウウウ!!
「クッ」
一方その頃ユリアンは、”王者の試練”の最終局面に立っていた。二つの道に分かれていた回り道の方を進み、途中いくつもの戦闘を重ねながら奥へ奥へと進んで行った。長い回廊が続きようやく広い場所が見えて来たと思ったら、突然巨人が襲い掛かって来た。今までと違う巨大な敵が襲い掛かって来たことから、恐らくこれが試練に待ち構える最後の敵だろうと、ユリアンは乾坤一擲の思いで戦いに挑んだ。
「ウガアアア〜〜!」
巨人の強力な一撃がユリアンを襲った!
スッ!
しかしユリアンはその攻撃を難なく回避し事無きを得た。
(攻撃の一撃一撃は強い。けど動きは鈍足で避けるのはそう難しくない。後はタイミングを見計らって……)
「ルウウウウ!!」
スッ!
「ウガアアア〜〜!」
サッ!
容赦なく続く巨人の攻撃をユリアンは交わし続け、攻勢に出るタイミングを見計らっていた。
「ルウウウウ!!」
「今だ!切り落とし!!」
迫り来る巨人の攻撃を、ユリアンはタイミングを見計らって弾き飛ばし、大剣技切り落としを食らわせた!
「ウガガアアアア〜〜!!」
敵の攻撃を弾き飛ばしその隙を突いて一撃を与えるカウンター技切り落とし。タイミングが合わなければ成功には結び付かないこの技をユリアンは見事決め、巨人は東方不敗の太刀筋に沈んだ。
「ふう……」
嘗てない強敵を倒したことに、ユリアンは緊張感から一気に解放され、軽い溜息をついた。
「見事だな、ユリアン」
「ユキトさん!」
その時、後を駆け付けるようにユキトが姿を現した。
「近道を選んだ俺の方が早いと思ったが、なかなかやるじゃないか」
王者の試練を受ける際、ユリアンは自分はそんなに力がないと回り道を選んだ。そんなユリアンに対し、なら俺は敢えて強敵が待ち構える近道を選ぶとユキトは近道を選んだのだった。
「敵はレッドドラゴンとサンフラワーの二体だけだったが、最初のレッドドラゴンが結構な強敵でな。それを倒すのに手間取ってしまったのが敗因の原因だ。まあ、俺は聖王遺物を欲しいとも思わんし、戦いの最中新しい技も覚えられたことだし充分満足できた。
という訳で、聖王の兜はお前のものだ」
「はい。ですが折角ここまで来たんですから二人で聖王の兜を取りに行きましょう」
「そうだな。それくらい付き合ってやるか」
そうしてユリアンはユキトと共に巨人の後に続く回廊へと足を踏み入れて行った。
その回廊は暗く両脇に並び立つクリスタルにより辛うじて光を確保していた。
「これが聖王の兜……」
回廊の先には宝箱が置いてあリ、宝箱を空けると暗闇の中でも輝きを見せ続ける聖王の兜が姿を見せた。
「早速被って見るんだな、ユリアン」
「え、ええ」
半ばユキトに促される形でユリアンは聖王の兜を被った。
「どんな感じです、ユキトさん?」
「なかなか似合ってると思うぜ」
「ありがとうございます。それよりも次どうします?」
話題を変え、ユリアンは次にどの試練を受けるかユキトに相談を持ち掛けた。
「そうだな。俺も弓は使えないし、”つらい試練”を受けるのがいいんじゃないか?」
「そうですね。では聖王廟の地下に向かいましょう」
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つらい試練の間がある聖王廟の地下室は、上とは打って変わって正しく墓場だという雰囲気を醸し出していた。
「しかし、ミシオさんから何の説明もありませんでしたけど、”つらい試練”ってどういう試練なのでしょう?」
つらい試練へと続く地下回廊を歩く中、ユリアンはそうユキトに訊ねた。
「さあな。とにかく受けてみろってことじゃないか?説明しなかったのも説明すれば辛さが減るからとかそんな所だろう」
「そんなもんですかね。あっ、何か見えて来ましたよ」
暗い回廊を歩く二人の目の前に白い物体が見えて来た。
『つらい試練だが受けてみるか?』
「うわっ!」
ユリアンが驚くのも無理はなかった。その白い物体は複数の腕を持つ骸骨型のモンスターであった。暗い中ではただでさえ恐怖感を感じるというのに、いきなり語りかけて来ることにより恐怖感は増すばかりだった。
「ユリアンどうする……?と、聞くまでもないか」
「ええ。勿論受けます!」
一瞬驚いたもののすぐに平常心を取り戻したユリアンは、以後動じる様子を見せず整然と己の意思を表した。
『そうか……。我が名はロアリングナイト。貴殿等の生命の力を試させてもらおう!』
ヒュ! ザシュ、ザシュ!!
そう言い終えると、ロアリングナイトは突然襲い掛かって来た!
「何だこの攻撃は……? 外傷がないのに妙に身体の力が抜けた感覚に襲われる……」
「恐らくこの攻撃はライフスティールのように生命力を奪う攻撃だ。外傷は与えられないが、食らい続けると生命力を根こそぎ吸い取られて死んでしまうぞ!」
ザシュ、ザシュ!!
「と、会話してる暇はありませんね」
間を置かずに攻撃を仕掛けて来るロアリングナイト。最初の一撃は不意に食らってしまった二人だが、二撃目は何とか交わすことに成功した。
「どうします、ユキトさん?」
「どうするって倒すしかないだろ! 骸骨型モンスターといえばこれだ! 十文字斬り!!」
先に進むにはとにかく倒すしかない。そう断言したユキトは、ロアリングナイトに対し剣技十文字斬りで立ち向かって行った!
ガキィ!
「何ぃ!?」
しかし、その攻撃はロアリングナイトにあっさり受け止められた。
ザシュッ!
「ぐわっ!」
しかもその隙に空いている手で攻撃され、ユキトは生命力を奪われてしまった。
「大丈夫ですか、ユキトさん!」
「ああ、何とかな……。しかし生半可な攻撃は受け流されるだけだぞ」
ザシュ、ザシュ!!
「くっ、言ってる側から!」
執拗なまでに繰り返されるロアリングナイトの攻撃。何とか回避しようとするものの、生命力を二度も奪われたユキトは足がおぼつかなく、完全には避け切れなかった。
「ユキトさん!」
「構うな! こいつは俺が仕留める!! 十文字斬りが効かないというならっ!」
そう言うとユキトは後方に下がり、その後残された力を振り絞る勢いでロアリングナイトに突進して行った。
「この一撃で仕留める! 疾風剣!!」
下手な攻撃は受け止められる。ならば疾風の如く勢いで敵に向かい斬り付けるこの技を決めるしかない! そう決心したユキトは、先のレッドドラゴン戦で閃いた剣技疾風剣でロアリングナイトに特攻した!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ〜〜!!」
ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュシュ!!
ガラガラガラガラガラガラ!!
ロアリングナイトの攻撃を食らうもそれに臆することなくユキトは突進し、敵の攻撃を更なる勢いで破り見事ロアリングナイトを打ち倒した。
「はぁはぁはぁはぁ……危なかった……。もう一撃食らってたらあの世逝きだった……」
「流石ですね、ユキトさん。僕には到底真似出来ませんよ」
身体を張ったユキトの攻撃に、ユリアンはただただ感心するばかりだった。
「なぁに。少しはお前に先輩面しなくちゃ俺の面子が立たんからな。それよりもさっさと奥に進もうぜ!」
「ええ」
苦戦はしたものの、何とかロアリングナイトを倒しユキト達は奥へと進んで行ったのだった。
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「それにしても、ユキトさん。限界近くまで生命力を吸い取られた割には元気ですね」
地下回廊を進む中、ふとユリアンがそんな疑問を投げ掛けた。
「ああ。恐らく奴を倒したことで奪われた生命力が元に戻ったんだろ。おっ、そんなことよりも宝箱が見えて来たぜ」
地下回廊を進んで行くと、その先に聖王ブーツが納められているであろう宝箱が見えて来た。
「何かさっきのより貧相なデザインですね」
「箱のデザインなど関係ないさ。聖王遺物には興味ないが、先に開けるくらいの権利はあるよな?」
「ええ。僕が倒した訳じゃないんで」
「なら遠慮なく」
ギイ……カチャ!
「ん?」
ユキトが宝箱を開けた瞬間、何やらスイッチが入ったような音がした。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「なっ!」
次の瞬間、辺りが揺れ出したと思ったら、地鳴りと共に突然床が崩れ出した。
「くそっ、罠かっ。ユリアン、急いで引き返すぞ!」
「はい! うわっ」
急いで引き返そうとするユリアンだったが、足を踏み出した瞬間その場が崩れバランスを崩してしまった。
「うわわわわわ〜」
そしてなし崩しにユリアンは崩壊する床と共に地下へ崩れ落ちたのであった。
「ユリアン!ぐわわわ〜〜」
急いで助けようとするユキトだったがユリアンを助けることは叶わず、自らも床の下へ落ちて行くのであった。
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「うっ……」
崩壊する床に巻き込まれてからどれくらいの時が経ったかは分からない。落ちてからの間気を失い続けていたユリアンだったが、聖王の兜を被っていたことにより頭部を損傷する致命打は避けられていた。
「と、ユキトさんは!」
意識を取り戻してまず気に掛かったのはユキトの安否だった。自分とは違い頭に何も装備していなかったユキト。大事に至ってはいないだろうかと、ユリアンはユキトの身を案じ、辺りを見回した。
「ユキトさん!」
歩き始めるとすぐ、目の前で倒れているユキトの姿が確認出来た。
「ユキトさん! ……これは……」
急いでユキトの元に駆け付けるユリアンだったが、ユキトに近付くと周辺に何枚も葉が散らばっているのが確認出来た。
「これはダンシングリーフの葉。成程、地面に落ちる瞬間ダンシングリーフを唱えてダメージを減らしたのか」
蒼龍術ダンシングリーフで咄嗟にガードしたユキトであったが、それでも完全に衝撃を打ち消すことは出来ず、床に落ちた衝撃で気を失っていた。
「ダンシングリーフには回復作用もあるし、暫くはこのままにしておいた方がいいか」
そう言うと、ユリアンは自分の命を救ってくれた聖王の兜を手に取って眺めてみた。自分はユキトさんのように術は使えない。もしこの兜を被っていなかったなら命を落としていたかもしれない。そう改めて自分の命を救ってくれた聖王の兜に感謝したのだった。
「ユリアン、ユリアン!」
「えっ!? この声はまさか……」
突然自分の耳に入ってくる声に、ユリアンは驚きを隠せなかった。何故ならばそれは狩人の試練を受けに行った筈のシオリの声だったからだ。
「シオリ、どうして君がここに……!?」
…To Be Continued |
※後書き
大変お待たせ致しました。前回よりも更に間を開けてしまい大変申し訳ありません。遅れた原因はFLASH作成していたり漫画を描いていたりしていたというのもあるのですが、何より書く気が起きなかったという感じです。早い話モチベーションの低下ですね。一年以上も同じテーマでダラダラと書き続けていて終わりが見えて来ないという…。まあ、何言ったて言い訳にしかなりませんのでこの位にしておきましょう。
さて、今回は聖王の試練を中心に書きました。本当はこの一話で描き切る予定だったのですが、いつものように長くなってしまい、次回に持ち越しという感じです。
また、聖王の試練は原作を大分アレンジしましたね。狩人の試練は試練の回数と射れる回数は原作と同じですが、原作は何でもありで弓を射るのが三連続なのを「ロマカノ」では異なる試練としました。
王者の試練はアレンジしたというよりは書いてから攻略記事読んで気付いたのですが、回り道ルートの最終ボスは巨人ではなくサンフラワーなのですよね。私は「ロマサガ3」は四回クリアしたのですが、王者の試練で回り道を選んだのは一回目のプレイの時だけなのですよね。何分一回目のプレイが7、8年前のことでして、記憶の曖昧さから回り道も近道も最終ボスは巨人だと思ってたのですよね。それで書き終えてから確認の為攻略記事読んで気付いたのですが、書き直すのが面倒臭かったのでそのまま押し通しました(笑)。
ちなみに、つらい試練も原作をアレンジしております。今回は具体的には描写しておりませんので、この辺りは次回のお楽しみということで。 |
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